9月には新米(令和6年産)の収穫が始まりますが、最近スーパーで品薄になったり価格が高騰したりと、例年にない異常事態となっています。
報道によりますと、米の需給逼迫の原因は昨年の東北地方の猛暑による減産と外国人観光客の増加による米の消費量の増加によるものと説明されていますが、真の原因とは言えません。
前者の猛暑による影響については、具体的にどの程度生産量が減少したかのデータが明らかになっていないので何とも言えませんが、被害が大きかったと言われる秋田で3%程度ですから全国で見れば微々たるものです。
また後者については誰かが適当に言ったことを単純に信じているだけで嘘八百です。その根拠は今年の訪日観光客は1-6月合計で昨年比1000万人増で、平均1人1週間滞在するとして米の消費量は約4000トン増になる。この量は、日本の米の年間生産量約800万トンの0.05%であることから誤差の範囲であり、需給逼迫とは無関係です。
もう一つの現象である米の価格の高騰ですが、報道では需給逼迫により価格も必然的に高騰しているという論法です。これも真の原因ではありません。
結局何が真の原因かと言うことですが、需給逼迫と価格高騰を分けて考えてみます。
需給逼迫の原因
需給逼迫の原因については2つのことが考えられます。
(1)農水省の統計には反映されていませんが、昨年来農家の稲作放棄が急激に進んでいることがあります。田園地帯を車で走りますと圃場整備の行われた1枚1ha前後の長方形の水田であっても休耕地の状態になっていますし、私の故郷である兵庫県新温泉町においては水田にトウモロコシを栽培しているところもあります。
農家の高齢化が進んで担い手がいなくなったと言われますが、それよりも稲作の諸経費がJAの引き取り価格に合わなくなったというのが真の原因です。具体的には田植え機やコンバインなどの大型設備の高騰と肥料や農薬の高騰です。稲作農家の大半は稲作は「副業」として行っていますが、「副業」が年金や正規・非正規の収入を食いつぶしてしまう状態に近づきつつあります。
必然的な結果として稲作の放棄が進みつつあります。
実際に耕作放棄がどの程度進んでいるかを実感として把握したい場合はGoogle MAPの衛星写真で見れば簡単に確認できます。
(2)最近の米の流通量は農水省の統計に反映されていない量が増えています。簡単に言えば闇市場です。
一般的に農家は生産した米を「玄米」でJAに供出していますが、単価が厳しく設定されているため農家の採算に合いません。したがって農家はいろいろな回避策で少しでも採算がとれるように努力しています。
例えば、生産した米の一部を旅館とか飲食店に直販したり、ECによる販売を試みたりと、JAへの供出価格より高い価格で販売しています。極端な例では家庭で食べる米以外は全て個人販売している農家もあります。もちろん合法的な範囲をわきまえて売りさばいています。
その結果として正規ルートで商売しているスーパーや量販店などからみれば品切れ状態になり、在庫の取り合いになっています。
よくテレビのインタビューで量販店の人が在庫が無くて困っていると嘆いていますが、裏事情を知っている農家の人は笑っています。
価格高騰の原因
最近近くの大手スーパーに行き米販売コーナーの状況を確認していますが、この1,2ヶ月でかなり高騰しています。
一般的には5kg入りで販売していますが、兵庫県南部の都会レベルの地域では、普及タイプで税込み2600円、高級タイプで3500円前後、米国産で1800円程度が相場です。
東京では普及タイプで3500円を超えていると聞いていますので本当かなと疑ってしまいます。
兵庫県新温泉町ではJAへの玄米供出価格は1050円と聞いていますので、精米では1150円になります。つまり小売価格を2600円としますと、JA管理費、物流費、小売店粗利で1450円が中抜きされていることになります。
長年中国で工場経営に携わっていた私からみれば異常です。
ちなみに、中国での日本と同種の米の小売価格は600円で、およそ1/4の価格です。
これが日本の米価格高騰の真実です。
日本人はこういう真実を知らない哀れな国民です。
こうなったのは全て政治の責任ですが、なぜそうなのかは改めて説明します。